ケルズの書
「ケルズの書」とは、8世紀にダブリンから北西へ約40kmのケルズ修道院で完成された、新約聖書四福音書の美しい装飾写本で、「世界一美しい本」とか「アイルランドの国宝」となっている。現在、ダブリンのトリニティ・カレッジという一番の大学に所蔵され、見るためにはお金を払い、時間予約をする必要がある。アイルランドに行くからには、これを見ない手は無い、と思い、事前にインターネットで予約して、アイルランドで真っ先に見に行った。現物は展示されているが、撮影は厳禁。似せて作ったそっくりの模造本が別に展示されていて、それは撮影可能であった。また、この「本物」を見に行くまでの通路に、現物の写真を多用した、その特徴などを示す詳しい展示がなされていた。
聖母子の絵のあるページを示した模造本
Wikipediaや様々な本を参照すると、全体の構成は次のようになっている。
Wikipedia「ケルズの書」より(なお、数字についているr、vであるが、rは「recto」の略で、ラテン語で「正面」を意味し、開いた本の右側のページ(奇数ページ)を指し、vは「verso」の略で、ラテン語で「反対側」を意味し、開いた本の左側のページ(偶数ページ)を指す。
トリニティ・カレッジの展示では、ケルズの書のページの一部が見られる。27vの四福音書の最初のページにある、福音書記者の紹介とそれぞれの象徴的図は有名である。下に示すが、左上がマタイ本人で『マタイの福音書』を示し、右上がライオンで示される『マルコの福音書』、左下が子牛で示される『ルカの福音書』、そして右下が鷲で示される『ヨハネの福音書』である。
次のは、291ページvの「ヨハネの福音書」の最初にある、ヨハネの肖像画である。このように各福音書の初めには、その書記者の肖像画が掲載されるなど、装飾的視覚的要素が強く出されている。
「マタイによる福音書」の32ページvには、イエスが復活後、天に昇って神の右手に座り、神の権威を完全に受け継ぎ、神の王国の王として即位したというシーンが絵画として描かれている。
また、ケルズの書の有名なところだということだが、キリストを示す「XP」の文字の組合せが見られる。例えば「マタイの福音書」p34rのところ。ギリシャ語で「キリスト」を意味する「「ΧΡΙΣΤΟΣ」」の最初の2文字X(キー)とP(ロー)を組み合わせたものである。
また、ところどころの文章の文字にも装飾されたものが使われている。トリニティ・カレッジの展示にはその一覧が示されていた。
私は、「ケルズの書」について十分勉強して行かず、物見遊山的な見学であったため、ここまで稚拙な説明で申し訳ない。トリニティ・カレッジがインターネットでこの「ケルズの書」を公開しているので、詳しく全貌を見たい方は
Work | Book of Kells. IE TCD MS 58 | ID: hm50tr726 | Digital Collections
を御覧になってほしい。