世界遺産の中で世界一流のコンサート鑑賞
バルセロナで体験したいことがあった。ここはガウディの多くの建物が世界文化遺産に登録されているが、そのガウディに講義を行ったこともある、リュイス・ドメネク・イ・モンタネールLluís Domènech i Montanerの最高傑作という、世界文化遺産カタルーニャ音楽堂でコンサートを聴くということであった。
せっかくガイドツアーを予約していたのに私の痛恨のミスで中に入れなかった超有名なサグラダ・ファミリア。ここに入れたら今回の旅行は100点満点だったのだが。
これも世界遺産。ガウディによるグエル邸。
降りしきる雨の中、迷子になりながら何とかたどり着いたカタルーニャ音楽堂
この音楽堂の見学ツアーも盛んで、昼間になされたものに参加した方々のとてもきれいな写真がネットに溢れているが、コンサートにまで参加した人の体験記は少ない。この音楽堂のウェブサイトでコンサートの予定と座席ごとの価格を見たら、ちょうど私がバルセロナに到着する日の夜に、有名なイギリスのフィルハーモニア管弦楽団の「スペイン・ツアー」のコンサートがあり、席によってはそんなに高いものでないことが分ったので、スペイン旅行の思い出にと、事前にチケットを日本から予約してプリントアウトして行った。日時は4月22日月曜日の夜8時からであった。帰りが夜遅くなるので、道に迷ったり、悪い人に出くわさないようにと、事前にGoogle mapでホテルまでの帰り道を決め、写真でもイメージトレーニングして、その写真もプリントアウトして備えておいた。実際に1時間近く余裕をもって向かったのだが、おりからたいへんな雨となり風まで出てきた。行き道も頭に入れておき、地図も片手に歩いて行ったのだが、途中で間違えたようで、完全に迷子になってしまった。結局地図も服もびしょ濡れになる中で10人以上の人に聞いて何とかたどり着いたのが8時10分近くだった。「だめもと」とチケットを見せたら、コンサート会場に入れてくれたばかりか、私のはABCDEのC席で3階であるにもかかわらず、その席まで係員の人は案内してくれた。運が開けてきたようで、会場はまだ初めの何か挨拶をしているのが終わる間際だった。途中のトイレを心配したことと、全体を上から眺めてみたいということで端の席を予約していたのも、他のすでに座っている人々に直接の迷惑をかけずにすんで良かった。私が席についてすぐベートーヴェンの「エグモント序曲」の演奏が始まった。この夜の演目は、他にシューマンのチェロ協奏曲とドボルザークの交響曲第6番、というマイナーなものだった。どちらも私は今までCDでも聴いたことが無かった。指揮者はMasaaki Suzuki氏。シューマンの協奏曲は楽章間の間がなく通しで演奏され、チェロソリスト、ジャン・ギアン・ケイラス氏は大熱演だった。ただ、メロディは印象には残らなかった。ここで休憩となり、私はトイレも済ませられ、余裕が出てきたので会場の撮影を開始した。
上のはすべてのコンサートが終わってからのもの。
ドボルザークの第6交響曲は、素人感想ではあるが、結構楽しめた。特に第1楽章はボヘミアののどかな平地を連想するようなメロディが印象的だった(私はチェコ・ボヘミアには、プラハからターボルまで行ったことがあり、車窓や高いところからの美しい景色を見たことがある)。ターボルの教会からの眺め(2000年8月撮影)。スメタナの「わが祖国」の「ターボル」を聴きながら眺めていた。第3楽章は、激しい、スラブ舞曲のようなリズムを刻んだところと、ベートーヴェンの英雄交響曲の出だしのような爽やかなメロディーが交互に繰り返され、今回の聴いた中ではこれが一番印象に残った。Wikipediaを後で見たら、第1楽章にはブラームスの交響曲第2番の影響があり、また第3楽章は初演の時アンコールで繰り返された、とある。私の感想、評価も全く的外れではないようだ。
アンコールは、チェロソリストはたぶんカザルスの曲、そしてオーケストラは私の好きなスラブ舞曲2の2だった。このカタルニア音楽堂は、建築美術の一作品でもあり、様々なものを装飾として付けているので、音響効果が悪いと、何かで読んだ記憶があったが、素人の私には、久しぶりの生のオーケストラ演奏、それも世界超一流のもので、すごい臨場感を真に受け、本当に来て良かった、と思った。
すべての演奏が終わり、スタンディングオベーションをした後、会場を出たが、雨は小降りになっていた。私は今度は「予習」しておいたとおり、夜道だが迷わず曲がるべきところで曲がり、幸いなことにどの道にも前を行く人々がいて、悪い人たちにも巡り合わず(というか、スペインでは親切な対応には何回か遭ったが、運が良かったのか治安が良かったのか、1回も怖い思いをしたり、危険を感じることは無かった)、夕食をとることができてなかったので、途中の開いている店でパンを買い込むという余裕で、11時前に無事ホテルに帰ることができた。苦労した分、大きな充足感に浸れた夜だった。